クラウド

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「クラウド」という作品です。

 前回アップしました〈富士山〉の雲から、今回はクラウドでも別の意味のクラウドです。 クラウドコンピューターのクラウドのことです。

 この作品を描き始めた時、早い段階で左右の高い峰、そしてそのあいだに深い峡谷のような形が生まれました。最初のイメージは中国雲南省あたりの少数民族の人たちが住む地域の風景でした。文字を持たなかった人々、たとえば白族の人たちがたがいに歌で気持ちを伝え会う歌垣のことが浮かびました。とても越えられないような深い谷をはさんで、多くの情報が、そしてなによりも喜びや悲しみ、あるいは恋する切なさなど人々の様々感情が、人間のしっかりと意志を持った声によって相手に届けられる、どこか古代的なイメージです。

 ところが、絵を描く作者としては画面のこの独立した2つの峰をもっとつなぎたくなりました。なぜなら画面がふたつに割れたままだからからです。さしあたって、余白のの部分に丸い雲のようなものをいくつか描いてみましたが、どうも物足りない。もっと2つを強く結びつかせたい。そこで擦れた濃いめの線を真ん中の雲のなかをくらせて、このふたつを結んでみると、こんどはそれがインターネットのケーブルのようにも見えてきて、古代的なイメージのうえに現代社会のコミュニケーションの有り様が上書きされていきました。

自分の声によるにしろ、ネットを利用するにしろ、画面のなかの世界ににしろ、つながっていたい、つなげたいと思うのは本能のようなものなのでしょうか。