『 Transeurasian Languages 』

 

 

 

英国から本が届いた。

これはユーラシアの言語に関する大全として、オックスフォード大学出版局から2020年に出版された。これは作品『k2』をカバーに使っている。

 

2018年、私は夫の学会参加にひっついて、旧東ドイツのイエナという街を訪れた。

学会の初日に主催されているこの著者の方にお会いした。ご挨拶がわりにと自身の作品集を差し上げたところ、翌日ご自分の企画されている大全のカバーに使わせてもらいたいという申し出があった。学術書籍だろうから、こんなに立派な書籍になるとも思わず、お役に立てるならどうぞとお返事した。

 

 

ところがはそれからが大変だった。日本国内では何冊か本のカバーや装丁は経験していたが、とくに契約書などを取り交わすこともなく、出版されると、幾らかのお金と出来上がった数冊をいただくようなことでやってきた。

しばらくして、出版社から英文の契約書へのサインと外国送金ができる口座の指定を求められて、面食らってしまった。幸い古い友人に法律に詳しい人がいて、手伝ってくれて、いくつかのリクエストを追加して、無事契約することができた。

2020年2月刊行と聞いていたが、コロナの流行によって、刊行が遅れたようだ。そして当初予定していた著者の方との再会もかなわず、お会いすればたぶん1冊ぐらい頂戴できると思っていたこの本は「取らぬ狸の皮算用」に終わった契約書の中に、はっきりと1冊送って欲しいと書けばよかったと後悔した。

そんなこんなで、自分の作品をカバーに使ってくれたオックスフォードのこの大全は、私の輝かし経歴のひとつになったにもかかわらず、webの注文サイトで眺める垂涎の書籍となった。とにかく分厚く。価格もヘビー級であり、購入をあきらめていた。

 

その様子を見た夫が「自分も読みたいから」と言って、ネットで注文してくれ手届いたのが、この段ボールの中のこの大全である。

1989年にカラコルム山脈を越えてユーラシアを感じた体験が、2002年になって作品「K2」となり、2008年になって作品集に掲載した。その作品集の中のこの作品が2018年にドイツの言語学者の方の目にとまった。

到着後カバーはすぐに外されて、日に焼けないように書棚の中で大切に保存されている。夫はもうこの本を読み終えたのであろうか?素直に「ありがとう。」と言いたい。