台風一過。大きな被害がなくてよかったのですが・・・・

台風一過。大きな被害はなかったようですが、今回のことは日中関係に大きな傷を残しそうです。

 スポーツや文化交流ので面にも影響がではじめています。本当に残念なことです。ここ数日、日本国内での中国関係の演劇や演奏会が中国側からの指示で急きょ中止されたそうです。日中国交正常化40周年を記念して、私の住む福岡でも九州に関わりのある日中の芸術家や留学生による合同の展覧会が企画されています。

 私も大きな水墨画の作品を2点出品する予定にしています。この展覧会は福岡市アジア美術館で11月上旬に開催される予定なので、おそらくそのころには事態は沈静化しているでしょうが、、やはり他人事とは思えません。石原都知事の発言が回りまわって、私の作品の出品の件に関係してくることになるとは、彼の発言をテレビで見ていた時には全く思いもよらなかったことです。

 中国という国が経済面はもちろんのことですが、文化や学術交流・スポーツ活動を政治というものと切り離しては考えることができないきわめて政治的国家であるということを再度認識いたしました。

激変する中国と変わらない中国

 しかし、よく考えてみれば、そもそも中国という大国は、2000年以上統一と分裂を繰り返してきました。帝国が統一されれたその瞬間から、内的矛盾や北方からの侵略によって、小さな事件をきっかけとして帝国が崩壊してきました。そしていったん崩壊し、国内が混乱しきってしまうとまた次々に英雄たちが現れ、中国は統一されてきました。漢民族を中心にした中国は常に一つに統一されていなければならないという中華思想は、ひっくり返してみれば、放っておけばすぐ分裂し、バラバラになってしまいそうになる祖国をとにかく分裂させないように、常に政治的措置が繰り返しなされ続けられてこそ、保持されてきたのではないでしょうか。

 私には1989年、北京での留学中に天安門事件によって、日本に一時帰国を余儀なくされた経験がありますが、あれから20年以上がたち、中国の人々が豊かになってきわめて変化していくのを見ていると、その本質をどうも見忘れていました。中国という国家が如何に国内の動乱や分裂を恐れ、そのためにどのような強硬な政治的措置も辞さないかということをよく理解しておかなければならないと感じました。

中国人にとって大切なことはなにか?

 また外交のルールとか民主主義とか人々の人権といったこととはまったく別の次元の価値観が中国にはあって、国家が成り立ってきたことをよく心にとめておかなければならないと改めて思いました。また中国人の価値観にとって、たとえばたとえば面子の問題であったり、友との関係のありかたであったり、あるときは実利であったり、とにかく相手にとって何が最も大切なことがあるのか、日本人ともっとも違うところををよく見定めなければ失敗します。

 同じ漢字を使い、多くの人が肌の色も同じなので、日本人と感覚が近いのは事実ですが、中国語の「対不起」(すいません)はきわめて重い言葉であって、中国の人々はそう簡単には用いることはありません。今回のことは私たちが中国と40年間文化や経済面で非常に交流してきたにもかかわらず、日本の政治や外交の世界においては、中国への対し方の方法をほとんど習得できていなかったことを露呈してしまったように思います。