あらしの夜
21世紀に入ってから、大変な災害が繰り返してやってくるようになった。地震に津波、台風に集中豪雨、みんな想定外のレベルになった。もはや都市でも田舎も関係ない。
愛犬のボーダーコリー、ソフィーちゃんを連れて私はどこに避難できるというのだろう?
それでも最近は台風や集中豪雨の前になると、避難用のリュクの中身を確認して、3日分のドックフードをジッパーに入れて寝るようにしている。
雨が時間に50ミリ降るとなると、その雨音はもはや恐怖である。枕を抱きしめ、抱きしめ、朝の来るのを待っている。
こうして年齢を重ね、少しずつ体力や気力が衰えてくると、どうということもないのに不安な感じが消えない。
お年寄りが『本当に昔は良かった。』と口にするをのをよく聞くことがあるけれど、そういう気持ちもうなづけるようになってきた。
たぶん以前は不安な気持ちよりも好奇心の方が上回っていたのか、私は不安な自分の気持ちに気づかずにきたのだろう。そのせいか、これまで不安な気持ちを作品として表現することもあまりなかった。老いという不安、健康についての不安、誰かと別れなければならないという不安、経済的な不安、人の心はどんどん不安を材料に新しい不安を作っていく。そんなこんなで、近頃は不安な感じの表情の作品が生まれることも多い。
アップルミュージックのお気に入りから、「Hold me 嵐の夜はベッドで抱いていてね Hold me 風に吹かれて飛ばされぬように抱いて 抱いていてね」と聖子ちゃんの歌う声が聞こえてくる。
私はたくさん不安な種を抱いて墨を磨っている。墨は磨り下ろせても、たくさんの不安な種はそう簡単には磨り下ろせない。
それでも、私はきっと反故紙になった作品たちに救われているのだろう。
そうだ!不安な感じの作品もこれからは発表してみよう。
それもまた私の世界なのだから。
不安な感じの作品! 切ない感じの作品! 悲しげな作品!
ネガティヴな感情もそのままに、
美して◯◯な、そんな作品も。
2020年8月14日