アーサー王の丘

 

 

エディンバラの街はチョコレート色、「ロイヤル・マイル」と呼ばれる東西のを貫く長い石畳の坂道がエディンバラ城へと続いている。

そのメインロードに立つ建築群は、ロンドンなどにある古い建築と比べると、もう少しバロックで重厚感がである。外壁には装飾がたくさん貼り付けられいて、とても饒舌な印象を受けた。頑固で温かいスコットランド人の気質と重なるような感じもする。それらを見た時、もうここはイングランドではなく、スコットランドに来たという実感がした。

バッグパイプの音色が重奏低音のようにこの街を漂っている。

 

 

この作品は筆先を立てて、中鋒で線を描き、形を探っていくような描き方をした。

起筆は、右下へ向かう弓のような一本の濃い線から始まる。それから何本、無駄な線を描いたことか。その線と線が出会い交差し、大小のいびつな幾何学的図形が生まれた。

このキュビスムのような色面は初めから意図したものではない。

たとえば天才ピカソのキュビスムの作品は、まず全体の形を多角的に捉えて色面として分割し、再構成して作り上げていくものであろうが、これに対してこの作品は、真逆の描き方で進めていった。卵の殻の破片のような図形が、ひとつの屋根やひとつの窓を想起させたことをきっかけに生まれてきた。

画面の中で見つけたそれぞれの図形から、何か具体的なものを手繰り寄せ、組み合わせ、全体のイメージを構築していった。その作業の繰り返しのなかで、ある部分がたとえば教会のようになったり、広場やレジデンスのように見えてきたりして、そこからやがてどこか中世のような、街並みのような風景を感じ始めた時、以前訪れたエディンバラのこの通りの記憶と繋がったのである。籠を編み上げていくように、部分をつなぎ止めて制作した。たくさんの斜めの線の繰り返しによって生じる、全体の重心の傾きと線の暴走を、色の配置と濃淡とでなんとか押さえ込んでを画面を安定させた。

 

 

この傾きを、愛するものに純粋に心を傾けていくスコットランド人の気質とスピリッツに、シンクロさせられたらと願う。