バッグパイプ

 

 

エジンバラの街角にはずっとバッグパイプの音色が流れている。その音色は途切れることがない。

バッグパイプは羊の手足の皮で皮袋を作り、その皮袋に空気を吹き込み、皮袋を圧迫して空気を押し出し、何本か取り付けられている笛から音を出す仕組みになっているらしい。空気を袋の中に貯めることができるので音色が途切れないのだろう。ずっと低音で鳴っている和音があって、そのうえをメロディが浮遊する。聞いているといつ始まって、いつ終わるのかわからなくなる。まるで音の輪廻のようである。

きっと音たちは皮袋の中で生まれる準備をしているのだろう。出番を待った音たちは、細い笛を産道のようにすり抜けて、空気を震わせながら生まれてくるように感じた。

果たして紙の効果だろうか?それとも墨の効果だろうか?

ポタポタと落とした墨たちが、遠近感や立体感を形成しないまま、上の方へ浮かんでいっているように見えて、その浮遊感が私にエジンバラの街角で聞いたバッグパイプの音色を思い出させた。

 

 

特になにが描いてあるというわけでもない。

線や面、点のリズムや 墨の濃淡、潤いと掠れや滲みを楽しんで見てもらえたらそれでいい。

 

 

もし墨の海に心を遊ばせてもらえたら、冥利である。