雪解け

 

 

レモンいろの春です。

 

 前回の「春のイニシャル」がピンクを基調として、まだ寒くてかたい冬の空気なかに、春の気配を感じる瞬間を表現したかったのに対して、こちらはもう春に入っています。

  雪国の春が一気に芽吹いて、花々がいまにも次々と咲き始めるような瞬間を「レモンいろ」で表現しました。黄色という色彩はとても面白いものです。ひとつの色で三つの季節が表現できます。薄い黄色は春のレモン色、たっぷりとした黄色は夏のマーメード、そしてやや赤みをおび ると菊やいちょうを連想させ、季節は秋に移っていくように感じさせます。この作品のレモン色がご覧いただいている方のディスプレイの明暗の差のなかで、うまく届けられているとよいのですが。データーだけでやりとりすると秋の絵だと思われる方もいます。たぶんディスプレイで黄色みが濃くでているせいでしょう。

 

 

 

これが全体の作品です。

 

 

 

 

 もっとも難しいことはレモンのいろ花の向こうに、なにか沢のようなものがあるように感じてもらえるかどうかということです。水墨画の場合、白い絵の具は使わないので、白い余白に薄墨の濃淡でものの存在の気配を表現します。その墨が濃くなればなるほど、具体性が増していきます。イメージが絞られいきます。描くねらい目はなにかがあるような、ないようなというあたりでしょうか。