「もうひとつの月」

 

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昨年の5月ごろに描いた作品です。

そのころ、熊本地震のために崩れてしまった熊本城の天守閣の映像が、テレビに毎日のように報道されていました。
とくに地震をテーマに描こうとは思わなかったのですが、描き進むうちに「なんだろう?建物のようなこのかたち?」「もしかして、お城では?」と気づき始めました。
しだいに手の動きと視覚的記憶が結びついてお城のイメージがが固まって来た作品です。
黄色い三日月になにか象徴的な印象を持たせたくて、黄色い顔彩をくりかえしにぬっていました。

描いているうちにこの三日月がなんだか、戦国武将の兜の飾りのようにも感じられてきて面白かったです。三日月の兜飾りといえば伊達正宗でしょうか?どうして城主だった加藤清正や細川幽斎といった諸侯でないのかとか思いながら。
この月は明けの三日月。もうすぐ新月になって生まれ変わる月、26日めぐらいでしょうか?月の出が遅い三日月なので、なかなか見ることはできない月です。

ひだりのほうに倒れてきそうな建物たち「C」の字型に受けて、ひとりで支えているようにもみえます。どんどん薄くなって消えていく三日月。「地上の月」これがもうひとつの作品名でもあります。私の作品の中では物語性のある作品のひとつです。

 

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