表参道での個展 2019夏

 

 

 

1.<ゾーイング>

東京表参道での個展ということで、2年前からしっかり準備しては来たが、やはり随分緊張した。

前面ガラス張りという空間の広がりを、自分の作品を使ってどうのように生かしていくのかがひとつの課題でした。軽やかで透明感のある空間にしたいと思った。作者ですからひとつひとつの作品をよく見せたいのはもちろんだが、むしろ作品だたちが紡ぎだす「空気感」を実際の物質としての建築素材によって構成され、創り出された空間に共鳴させ、そこに表参道というブランドイメージを加えてみたいと考えた。

絵を見てもらって、ギャラリーを出て、表参道の地下鉄へ向かう頃、なんかいいギャラリーだった、いい展覧会だったねと思ってもらえるような空気感を作りたいと思った。

 

 実際やってみてよかったのは、華やかなブランドの集まる表参道という印象から、通りを少し中に入ったこのギャラーの周りは、個性的なお店も多く、そこかしこにグリーンの植栽がみられたことである。みどりのイメージを利用して、ギャラリーのうちと外の仕切りを緩やかに融かして、意識の流れを道路側からつないでいくことができた。

 

運のいいことに初日の朝、外苑の近くに昔ながらの竹屋さんを見つけルことができ、青竹の結界を作って、届けてもらうことができた。また竹屋さんの紹介で青山学院大学のすぐ近くにグリーンを上手にアレンジされる花屋さんを紹介してもらうこともできた。この緑の感じは毎日変化している。

 

 

というのは防犯上のこともあって、ギャラリーを閉める7時には室内に入れ、また朝外に出したので、天気やスタッフさんの感覚によって配置やシダ類のアレンジが変わっていった。

こんな感んじで竹を結界として利用するアイデアは2014年の英国ノーリッジでの個展から、私の展示においてスタイルとして確立した。

ノーリッジのギャラリーの入り口付近に海で拾ってきた石ころと一緒アレンジして配置してみた。

 

 

 

2.<展示のスタイル>

 

 

作品はそのほとんどを額縁やパネルに張り込むという形ではなく、シンプルな掛け軸仕立てで展示した。

作品を巻き上げるとこんな感じ で、ざっとが約30点。これを養生したダンボールにに入れて運ぶという方法で、この方法は英国ノーリッジの個展の時に考えついたもである。

こういうダンボールの箱をネットでオーダーして、その中に作品を紙筒を利用して、平置きにして輸送した。縦横高さの和を160以内に設定することで宅急便として送ることができ、また時間指定をかけられるので、搬入時間直前にギャラリーに到着させることもできる。ただし、長尺ものはこの限りになく、画材店発送をお願いした。

 

掛け軸の上部にの竿にごく小さな金物を左右2箇所仕込んでいる。その金物の輪っかの部分にテグスを通してくくりつけ、そのテグスをギャラリーのピクチャーレールのフックにとめる。ワイヤーではなく、テグスを使っているので、縦ラインがなく視線を邪魔せず、スッキリと見える。まるで作品が壁に浮いているように感じさせたかった。

 

 

アクリル板をかぶせていないので、たしかに破損や汚れのリスクがあるが、なによりも見やすく、輸送の面でもコンパクトでコストも抑えられるのが魅力的である。また美濃の裏打ち紙の風合いを生かし、それを表装として見せることで会場にニュートラルでウブな感じの空気感を醸し出させたかった。

 

3.<コンセプト21 ギャラリーの平面図と展示計画>

 

このギャラリーの展示スペースの特徴は道路側が前面ガラスになっていて開放的で自然光が入ってくることでる。このガラス面は西向きにななっているため、7月の太陽高度を考えると直接室内に光が差し込むのは夕方の6時〜7時ぐらいであるが、梅雨の末期でもあり、雨の日もあり、そう気になることはなかった。部屋の構成が2室、メインとなる部屋とサブの小さめの部屋に分かれている。メイン室の方は壁面も大きく大小の作品を変化をつけて展示することができた。

まず、上のギャラリーの平面図をもとに1/20の平面図を作成して、そこに候補となる作品の写真データをこれも1/20の縮尺でプリントし、切り抜いたものを利用して展示の流れを考えた。

個展の案内もDMハガキに使った作品「杏村」は横幅が130センチあるのでエントランスを入って正面の1700の壁におさめることとし、ここを起点に色彩のあるものとないもの、線の多いもの、余白の多いもの、自由なものクラッシックなものなど色彩のもつ印象をつなげならがら、ストーリーを組み立てたていった。

さらにこの平面図にボードで壁面を作り模型を作ってみた。

 

 

少し視点を下げてのぞいてみると、こんな感じである。

 

 

まずはこのプランで搬入することにした。

 

 

予想していたように「杏村」は1700の壁にしっくりとおさまった。予定どおり2時間で終了できると思われたが、実はここからが大変だった。7時終了の予定が、8時を超え、やっとなんとか形になった。実際にかけてみると作品どうしがしっくりいかなかったり、スペース的にタイトであったりと、入れ替えが発生、展示作業は計画どおりならないのが常であり、自分の個展においても例外ではなかった。

もしかしたら、展示することの方が、制作することよりも難しいように感じる。ひとつには時間的制約がり、もうひとにはデイレクターとして、手伝ってくださる方に簡潔に指示を出さなければならないからであろう。

すったもんだしたものの、素晴らしい展示に仕上げることができた。何をおいてもギャラリーのスタッフの方々にお礼を申し上げたい。