月明かりのみちをたどって

 

 

月明かりのみちをたどっていくと川のほとりに出ます。

 夜、犬の散歩によく行きます。この週末は台風が来ましたが、福岡ではきれいな満月をみることができました。月明かりに照らされて、川べりの道の雑草がうっすらと光っていました。ちょうどこの絵にあるような感じです。

 私はこれまで中国製の墨汁を使って制作していました。中国の作家たちが墨汁を使って制作することはごく普通のことでしたので、とくに墨の種類や善し悪しを気にとめることもしませんでした。ところが、ここ数年、いろいろあって、また東北の震災のこともあって、思うように制作できませんでした。そこで、スランプによくあることですが、道具の研究をしはじめました。筆や墨について調べてみました。

  すると墨は単に膠と煤だけでできているわけではなく、たとえば中国の古い墨には、そこには香料はもちろん、光沢を出すために金であったり、真珠であったり、あるいは腐敗を防ぐために漢方薬の一種なども配合されることを知りました。書家の方なら常識のことでしょうが、目から鱗です。この絵の光沢は、はやや古めの唐墨の五石漆煙に日本の奈良の墨メーカー、祥碩堂の墨汁「かな舞」を加えたの日中合作による墨液から生まれました。真珠の粉のような光沢を感じます。