「Cinema」

 

余白を生かした作品です。

2008年、4年ほど前の作品です。この作品には薄墨をあまり使っていません。筆圧の強い濃い線にはっきりとした色彩組み合わせ、余白の白に対比させて構成されています。

 

 

水墨画の場合色彩を使わなければ、薄墨が色彩の代わりになります。

 

  墨一色のなかに五色があるかどうかということです。つまり、一つの画面に 墨色の変化として、五色の墨として濃い墨、やや濃い墨、中間の墨、薄い墨、そして水のように薄い墨があるかどうかということです。そこで、一つの画面のなかで、面による薄墨に薄い色彩を重ねたり、近接して用いるとき問題が生じます。多くの場合、墨色が濁ってしまったり、色彩の輝きを壊してしまうことが少なくありません。

 

こころに濁りや戸惑いがあるとどうしても墨韻がそこなわれていまします。

 

 私の場合、色をつけるかどうか最初から決めておいて制作し始めることはあまりありません。

 

 

 やや濃い墨の線や点から開始して、次第に薄い線や面を描いてから、墨のままで描き進めるか、あるいは色を用いるか決めていきますが、実はその途中でよく迷ってしまい、色も墨も濁ってしまうことが結構あります。そういうことからいううとこの作品には迷いがなく、墨も色もうまくいきました。画面の上部に黄色い箱のような物体が黒沢明監督が映画のロケで使ったようなカメラに見えるので、「Cinema」というタイトルにしました。