「Teacher」という作品です。

 

サイズは全紙の3分の1、約45㎝×70cmの大きさのものです。濃い目の強い線にかなりしっかりと色をつけてある点では「Cinema」とすこし共通していますが、「Cinema」と異なるのは余白を少なくして、線が込み入った感じになっていることです。

前回紹介させていただいた「Cinema」と同じころ2008年の作品です。

薄墨と色の関係について

 薄墨を色を近接して用いると、薄墨は色と同じ働きを持つので、その両者が打ち消しあって濁った感じになりやすいといううことを前回書いてみましたが、この作品では制作中に薄墨だけではふわふわしているようで物足りなく感じました。ひとつには薄墨がうまくいっていなかったせいでしょうか。あるいは濃い線が多いわりに、中間の墨が少ないため、線たちと薄墨がしっくりいっていなかったためかもしれません。そこで薄墨による面のぼかしの部分はあまり触らず、線や点々の部分に色をさしてみました。色面の形を決めるために薄墨の部分に重なるところはやや強めに明るい色をつけて濃い線と対峙させました。

なぜタイトルが「Teacher」なのか?

画面左端から長い首を屈曲させて登場しているあひるのような鳥が、右半分にいるいろんなキャラクターの動物たちを見守っているようにみえたからです。これらの動物たちはやんちゃで生意気で、個性的な子どもたち。ちょっと目を離すと勝手にどこかに行ってしまいそうです。長女が中学生だった頃、PTAの仕事のお手伝いでよく学校にいきました。中学校の先生は大変なお仕事だなと感じていました。そんな日常の体験がこの作品の背景にあるのかもしれません。